2026年10月1日、カスタマーハラスメント対策が全事業主の義務になります。残り2週間ほどです。「研修はもう実施した」「マニュアルも作った」——そう答えられる企業は少なくありません。ところが同じ時期の調査で、顧客対応にあたる従業員の約6割が「マニュアルは未整備、もしくは存在を知らない」と回答しています。準備した側と、受け取る側。この2つの数字のあいだに何が起きているのでしょうか。
義務化まで2週間——2つの調査が示す認識のギャップ
改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から企業規模を問わずカスハラ対策が義務となります。方針の明確化、相談体制の整備、発生時の対応、相談者のプライバシー保護などが求められます。
準備状況について、2つの調査が対照的な結果を示しています。
人事・総務担当者111名を対象にした調査では、カスハラ対策に特化した研修を実施している企業は89.2%、義務化への準備が「十分に進んでいる」と感じる担当者は82.0%にのぼりました。形式面では高い水準です。
一方、顧客や取引先と直接やりとりする従業員300名への調査(2026年6月実施)では、職場のカスハラ対応マニュアルについて59.3%が「未整備」または「わからない」と回答。内容まで理解している人は19.0%にとどまりました。組織的にマニュアルに沿って対応できている職場は11.7%です。
研修実施率 89.2%(人事側の認識) 対 マニュアル未整備・不明 59.3%(現場の実感)
同じ会社の話とは思えない開きです。研修そのものが行われていないのではなく、行われた研修が現場の行動につながっていないと読むのが自然でしょう。
なぜ「実施したのに浸透しない」が起きるのか
調査からは、この状態が単なる周知不足では済まないことも見えています。直近1年でカスハラを経験した人は28.0%、そのうち88.1%が業務やキャリアに何らかの影響があったと答えました。
さらに示唆的なのが、会社への期待値の差です。マニュアルの内容を理解している人は「会社が即座に介入してくれる」と考える割合が45.6%だったのに対し、未整備の職場では8.0%。5倍以上の開きがあります。
つまりマニュアルや研修は、対応手順を伝えるだけのものではありません。「困ったときに会社は自分を守ってくれる」という信頼の土台になっています。逆に言えば、作っただけで浸透していない状態は、従業員から見れば「何もない」のと変わりません。義務化で問われるのは書類の有無ではなく、この実効性のほうです。
人事・研修担当者が今すぐできる3つのこと
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「知っているか」ではなく「使えるか」で確認する
周知率を測っても実態はつかめません。「カスハラを受けたとき、最初に誰に何を伝えますか」と具体的に問う形式に変えてみてください。答えられない人が多ければ、研修が知識の伝達で止まっているサインです。
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一般従業員と管理職で、研修を分ける
両者に必要なものは異なります。一般従業員に必要なのは、その場でどう応じ、どこで線を引き、誰に引き継ぐかという初動の判断基準。管理職に必要なのは、報告を受けてからの二次対応と組織としての意思決定です。同じ資料を配って済ませると、どちらも中途半端になります。
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ロールプレイを一度は挟む
カスハラ対応が難しいのは、知識ではなく「その場で言えるかどうか」だからです。実際に声に出す経験があるかどうかで、初動の速さが変わります。eラーニングだけで完結させず、短時間でも対面の演習を組み込むことをおすすめします。
関連する研修教材
義務化まで2週間という時期です。一から設計する時間がない場合は、そのまま実施できる教材の活用が現実的です。対象者別に2種類をご用意しています。
【2026年10月義務化対応】カスハラ対応研修(一般従業員向け)まるごとパッケージ
¥20,000(税込)
スライド・演習・配布資料をすべて収録。顧客対応の現場に立つ従業員が、その場でどう応じ、どこで線を引き、誰に引き継ぐかを演習込みで身につけられます。
【2026年10月 改正法対応】カスタマーハラスメント対応研修 管理職向け
¥20,000(税込)
部下がカスハラを受けたとき、管理職は何をすべきか。二次対応・組織体制の構築・部下のメンタルケアまでを扱います。講師台本付きスライド+配布資料7点セットで、3〜4時間の研修がそのまま実施できます。
まとめ
- 2026年10月1日、カスハラ対策が全事業主の義務に。研修実施率は89.2%と高い一方、現場の59.3%が「マニュアルは未整備・不明」と回答している
- マニュアルを理解している人の「会社が即座に介入してくれる」という期待は45.6%、未整備の職場では8.0%。研修は手順の伝達だけでなく信頼の土台として機能している
- 実効性を上げる鍵は「知っているか」ではなく「使えるか」。一般従業員と管理職で内容を分け、短時間でもロールプレイを挟む
書類が揃っているかではなく、現場の一人が困ったときに動けるかどうか。そこを起点に、手元の研修計画を見直してみてください。