「AI研修を全社展開したいが、予算が確保できない」——そんな悩みを抱える人事・研修担当者にとって、いま最も注目すべき制度があります。厚生労働省の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」は、AI・DX関連の研修費用を最大75%助成する国の制度です。2026年3月と4月に行われた2度の改正で対象範囲が大幅に拡充されましたが、この制度は2027年3月末で終了する時限措置。残り約9ヶ月で使い切るための活用戦略を解説します。
2026年3月・4月の制度改正で何が変わったのか——3つの重要な変更点
2026年に入り、事業展開等リスキリング支援コースは2回の大きな改正が行われました。社会構想デザイン機構の分析によれば、これらは「制度の最終年度に向けた利用促進のための大幅な要件緩和」と位置づけられています。
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対象訓練の拡充——「事業展開」以外の研修もOKに(2026年3月2日施行)
これまで助成対象は「新規事業展開」や「DX・GX推進」に関連する訓練に限定されていました。改正により、「企業内の人事・人材育成計画に基づく訓練」が新たに追加されました。イグナル・コンサルティングの解説によれば、「これからやる予定の業務に関わる訓練であればOK」というルールに変わったことで、たとえば既存事業のAI活用強化や管理職へのAIリテラシー研修も対象になりやすくなっています。
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設備投資加算の新設——研修用設備費も50%追加補助(2026年4月8日施行)
中小企業限定の新制度として、研修で使用する設備・機器の導入費用の50%が追加補助されるようになりました。1人あたり15万円、10人以上で最大150万円が上乗せされます。AI研修用のPC購入やソフトウェアライセンスの導入にも活用できる可能性があり、「研修だけでなく環境整備も同時に進められる」点が中小企業にとって大きなメリットです。
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新類型では認定支援機関の事前確認が必須に
新たに追加された「人事・人材育成計画型」を利用する中小企業は、あらかじめ認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認を受ける必要があります。MVV Insightsの分析では、この要件は制度の信頼性確保と不正防止を目的とした設計と指摘されています。最寄りの商工会議所や税理士法人などに認定支援機関が多く登録されているため、早めの相談がおすすめです。
AI・DX研修で「最大75%助成」はどう計算されるのか
厚生労働省の制度概要によれば、助成は「経費助成」と「賃金助成」の2本立てです。
- 経費助成:研修費用の75%(中小企業)/60%(大企業)
- 賃金助成:受講者1人1時間あたり960円(中小企業)/480円(大企業)
- 1事業所あたりの年間上限:1億円
たとえば中小企業が社員10名にAI活用研修(20時間・受講料1人5万円)を実施した場合の概算シミュレーションです。
- 経費助成:50万円 × 75% = 37.5万円
- 賃金助成:10名 × 20時間 × 960円 = 19.2万円
- 合計助成額:約56.7万円(実質自己負担は約12.5万円)
賃金助成を含めると、研修費用50万円に対して約57万円が戻る計算になり、実質的に研修を実施するほど「得」になるケースも生まれます。なお、経費助成には訓練時間に応じた上限額(10〜100時間未満で30万円/人)があるため、詳細は管轄の労働局に確認してください。
人事・研修担当者が残り9ヶ月で着手すべき4つのアクション
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管轄の労働局に「事前相談」を入れる
最も重要かつ最初に着手すべきステップです。自社の研修計画が助成対象になるかを労働局の窓口で確認しましょう。計画届は訓練開始日の1ヶ月前までに提出が必要なため、年度末の2027年2月に研修を実施するなら、遅くとも2027年1月には計画届を提出しなければなりません。逆算すると、今すぐ動き始める必要があります。
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AI研修のカリキュラムと実施計画を策定する
助成金申請には、訓練カリキュラム・受講者名簿・実施日程の詳細が必要です。補助金ポータルの解説によれば、研修内容を「自社の経営戦略・人材育成方針」と紐づけて整理しておくと、申請書類の作成がスムーズになります。前日のブログ記事で解説した人的資本開示対応の文脈で研修計画を策定すれば、開示用の「戦略と育成の連動」ストーリーにもそのまま使えます。
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認定支援機関に相談する(新類型利用の場合)
2026年3月改正で追加された「人事・人材育成計画型」を利用する場合は、認定支援機関の事前確認が必須です。中小企業庁のサイトで最寄りの認定支援機関を検索できます。商工会議所、金融機関、税理士事務所などが多く登録されています。
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設備投資加算の対象になる設備を洗い出す(中小企業のみ)
AI研修にあわせてPCやソフトウェアを導入する予定がある場合、4月に新設された設備投資加算の対象になる可能性があります。通常の助成金申請とは別途申請が必要で、申請期限も異なるため、研修計画と同時に準備を進めましょう。
助成対象になる研修プログラムの選び方
すべてのAI研修が助成対象になるわけではありません。申請前に以下のポイントを確認しましょう。
- 10時間以上のOFF-JT訓練であること——短時間のセミナーや講演会は対象外
- 職務に関連した専門的知識・技能の習得を目的としていること——一般教養的な内容は対象外
- カリキュラムと到達目標が明確に定められていること——申請書類に記載が必要
- 受講証明が発行されること——外部研修機関を利用する場合は事前に確認
体系的な研修プログラムをお探しの方は、階層別・テーマ別に整理された研修教材ライブラリもご参考ください。
まとめ
- 2026年3月・4月の制度改正で、AI・DX研修に使えるリスキリング支援コースの対象範囲が大幅に拡充された
- 中小企業は研修費用の最大75%+賃金助成+設備投資加算で、実質負担を大幅に軽減できる
- ただし制度は2027年3月末で終了する時限措置——計画届の提出期限を逆算すると、今すぐ動き始めるべきタイミング
最大75%助成を「知っていた」と「使い切った」の間には、大きな差が生まれます。残り約9ヶ月、まずは管轄の労働局への事前相談から始めてみましょう。
