「そろそろ出社に戻したい」という経営の声と、「リモートは続けたい」という現場の声。その板挟みで、いちばん難しい調整を任されているのは現場の管理職ではないでしょうか。制度をどちらに寄せても、チームのどこかに不満が残る。この構図は2026年に入っても解消されていません。むしろ、出社回帰が進んだことで管理職の負荷は変わった形で残っています。
テレワーク実施率21.4%、「原則出社」は2年連続で増加
パーソル総合研究所「テレワークに関する調査(2026)」(2026年8月27日発表)によると、2026年7月時点のテレワーク実施率は21.4%で、前年同期から1.1ポイント低下しました。「原則出社」を指示する企業は24.6%と2年連続で増加し、大手企業を含むすべての企業規模で前年を上回っています。テレワークの頻度が「減った」と回答した人も32.7%にのぼりました。
ところが同じ調査で、テレワーク実施者の81.6%が「今後も続けたい」と答えています。日本経済新聞もこの結果を報じており、企業側の出社回帰と働き手の希望との間に大きなズレが残っていることが分かります。
実施頻度の内訳も注目に値します。「1週間に1日未満」が29.8%、「1週間に1日程度」が19.0%。つまりテレワークをしている人の約半数は、週1日以下の低頻度です。業種差も大きく、情報通信業は55.7%と突出しています。「完全出社」でも「フルリモート」でもない、中途半端に混ざった状態が常態化しているのが実情です。
なぜ「混在チーム」のマネジメントが難しいのか
フルリモートの時期は、全員が同じ条件でした。全員が画面越しで、全員が同じ情報環境にいた。ところが週2〜3日出社のハイブリッドでは、同じチームの中に条件の違う人が同時に存在します。この「非対称」が、マネジメントの難易度を上げています。
具体的には3つの問題が起きます。第一に情報格差。廊下やデスクでの雑談で決まった話が、在宅のメンバーには届きません。第二に評価の歪み。目に見える場所にいる人を無意識に高く評価してしまう「プロキシミティバイアス」が働きます。第三に育成機会の偏り。若手が先輩の仕事ぶりを横で見て学ぶ機会は、出社日にしか発生しません。
これらはいずれも、就業規則や出社ルールを整えるだけでは解決しません。管理職一人ひとりの運用の仕方に委ねられている領域だからです。制度設計が一巡した今、次に必要なのは管理職側のスキル形成です。
人事・研修担当者が今すぐできる4つのこと
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「出社日に何をするか」を定義する演習を入れる
出社日数を決めるだけでは足りません。個人の集中作業は場所を選ばない一方、創造・連携・育成といった活動は対面が効きやすい——この切り分けをチーム単位で言語化する演習が有効です。全社一律のルールではなく、営業チームと開発チームで最適解が違うことを前提にします。
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プロキシミティバイアスを評価者研修で扱う
「よく顔を合わせる人を高く評価してしまう」という傾向は、意識しないと自覚できません。評価者研修に、在宅メンバーと出社メンバーの評価根拠を突き合わせるワークを組み込み、成果の記録が偏っていないかを管理職自身に点検させます。
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情報共有のルールをチームで決めさせる
「重要な決定は必ずテキストに残す」「立ち話で決まったことは当日中に共有する」といったルールは、管理職が一方的に決めるより、チームで合意した方が守られます。研修の場を、その合意形成の機会として使う設計にします。
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1on1の頻度と質をリモート前提で組み直す
偶発的な会話が減った分は、意図的な対話で埋めるしかありません。ただし回数を増やすだけでは形骸化します。雑談で終わらせない問いの立て方を管理職が身につけているかどうかが、ハイブリッド環境では従来以上に効いてきます。
関連する研修教材
出社とリモートが混在するチームのマネジメントは、従来の管理職研修だけではカバーしきれない領域です。信頼構築と成果管理の両面を扱った教材をご活用ください。
¥20,000(税込)
テレワーク・出社混在チームでの信頼構築と成果管理。情報格差の解消、評価の公平性、リモート下での育成まで、チームリーダーが実務で直面する課題を演習付きで扱います。
まとめ
- テレワーク実施率は21.4%に微減し「原則出社」は24.6%と2年連続増。一方で実施者の81.6%が継続を希望しており、企業と働き手のズレは解消していない
- ハイブリッドの難しさは「全員リモート」ではなく同じチーム内に条件の違う人が混在することにある。情報格差・評価の歪み・育成機会の偏りの3つが管理職に集中する
- 制度設計は一巡した。次に必要なのは管理職の運用スキル——出社日の目的定義、プロキシミティバイアスの自覚、情報共有ルールの合意形成、1on1の再設計の4点
出社率という数字だけを追いかけても、チームの一体感は戻りません。まずは管理職が「混在チームには固有の難しさがある」と認識し、それを扱う言葉を持つところから始めてみてください。