「パワハラ防止研修は実施している。でも、日常の指導や相談対応など具体的な行動まで変わっているだろうか」。人事・教育担当者の皆さまが、研修の内容を見直す際に考えたいポイントです。
弊社が運営する無料の簡易診断「これってパワハラ?」の診断利用が、累計1,000件を超えました。このサービスは、受けている言動がパワーハラスメントに該当する可能性を簡易的に診断し、状況整理をするために提供しています。
今回は、2026年10月14日時点の保存済み診断1,109件から、管理者研修で取り上げたい3つの視点を考えます。
※以下は、悩みを持ってサービスを利用した方の回答傾向です。同じ方の複数回の利用を含む可能性があり、人数や社会全体の被害率を示すものではありません。研修への提案は、集計結果を踏まえた弊社の考察です。
1.精神的な攻撃の選択が77.5%——日常の指導場面を振り返る
6類型のうち、精神的な攻撃に関する行為が選択された診断は860件で、全体の77.5%でした。過大な要求は394件(35.5%)、人間関係からの切り離しは358件(32.3%)でした。
※複数回答です。各類型のいずれか1項目以上を選択した診断を数えているため、割合の合計は100%を超えます。選択された行為について、全てがパワハラと確定したものではありません。
具体的な項目では、「必要以上に厳しく注意された」が621件(56.0%)、「他の従業員の前で大声で叱責された、侮辱された」が462件(41.7%)ありました。
この傾向を踏まえると、研修には、日常の注意や指摘の仕方を振り返る時間を設けたいところです。管理者が「指導のつもりだった」と感じていても、相手に何が伝わったのかを考える機会が必要ではないでしょうか。
例えば、提出期限に遅れた部下を注意する場面を題材に、次の点を検討できます。
- 指摘の対象が、具体的な行動や業務上の課題になっているか。
- 人格や能力を決めつける言葉になっていないか。
- 注意する場所や、周囲にいる人への配慮があるか。
- 次に何を改善すればよいか、相手に伝わる説明になっているか。
「自分ならどう伝えるか」を書き、参加者同士で言い方を比較する演習にすると、知識を実際の指導場面に置き換えて考えられます。なお、言い方を変えるだけで個別の行為の適否が決まるわけではありません。
2.グレーゾーンが58.9%——判断に迷う場面を扱う
簡易診断の結果は、「パワハラの可能性が高い」が437件(39.4%)、「グレーゾーン」が653件(58.9%)、「該当しない」が19件(1.7%)でした。
この結果は、チェックリストに基づく簡易判定で、個別の事実関係を調査した結論ではありません。また、グレーゾーンの割合から、利用者自身が判断に迷っていた割合まで分かるわけではありません。
研修では、この数字をきっかけに、ひとつの発言だけで結論を出しにくい場面を取り上げたいと考えています。
例えば、「同じミスを繰り返した部下に強く注意した」という事例について、何が起きたのか、どのような言葉が使われたのか、頻度や長さはどうだったのか、業務上の事情は何かを検討します。追加で確認したい情報を挙げたうえで、管理者として改善できる対応を考える流れです。
研修で扱う事例は、今回の利用者の自由記述を転載するのではなく、架空の場面として用意します。正解を当てることに加え、情報を確認し、相談先につなぐ姿勢を学ぶ機会にしたいところです。
3.相手が「上司」という回答が55.0%——相談を受け止める体制を考える
言動の相手については、「上司」が610件(55.0%)でした。一方で、「部下」169件、「先輩」149件、「同僚」102件など、上司以外の関係についても回答がありました。
この内訳は、相手との関係の回答を集計したもので、各関係におけるパワハラ成立の割合ではありません。
企業側で振り返りたいのは、直属の上司との関係に悩んでいる方も利用できる相談経路があるか、管理者が相談を受けた際にどう対応するかという点です。
研修では「部下から、別の管理者の言動について相談された」という場面を使い、最初にどう応答するかを練習できます。すぐに相手を評価したり解決策を押し付けたりせず、話を聴き、本人が何を望んでいるかを確認する。その後、自社の相談対応手順に沿って、適切な担当者につなぐ流れを確認します。
相談窓口の名称を覚えるだけでなく、「自分が相談を受けたときの最初の一言」を考えることが、研修を実務に近づけます。
管理者向け診断で、研修前後の理解を振り返る
ここまで取り上げたのは、受けている言動に悩む方のための簡易診断データです。これとは別に、弊社では、管理者自身のリスク認識・知識・対応力を確認する「パワーハラスメントリスク診断」を提供しています。
全38問の診断で、3軸のスコアとカテゴリ別の弱点を確認でき、設問ごとの解説を振り返りに活用できます。
研修前に診断を受け、自分が理解しにくいテーマを把握する。研修では具体的な事例を検討し、研修後に解説や学んだ内容を振り返る。こうした流れで、自分の指導や対応を見直す機会としてご利用いただけます。診断の得点だけで、職場での行動変容や予防効果まで確認できるものではありません。
社内研修に活用できる2つの教材
研修を具体的な演習や相談対応につなげる際には、次の教材もご活用ください。
- リーダー向けのパワハラ防止研修教材(L26_05):日常の指導とハラスメントの境界、相談を受けた際の対応を扱います。現場での関わり方を振り返る研修にご検討ください。
- 管理者のためのハラスメント防止研修(T26_01):管理職の役割、組織としての防止体制や相談対応を扱います。部門の取り組みや対応手順を考える研修にご検討ください。
ご関心をお持ちいただけましたら、まずは商品ページの内容や試し読みをご確認いただき、自社の対象者・課題に合わせてお選びください。
今回の回答を、職場全体の実態を断定する材料にすることはできません。それでも、日常の指導、判断に迷う場面、相談対応という3つのテーマを、自社の研修で十分に扱えているかを考える材料にはできます。
管理者一人ひとりが具体的な場面を振り返り、職場で実践する行動を一つ決める。その学びを支えるために、診断と研修教材をご活用いただければ幸いです。
集計概要:2026年1月31日〜10月14日の保存済み診断1,109件。日時は日本時間。同じ方の再利用を含む可能性があり、テスト利用は識別・除外していません。割合は小数第1位に丸めています。6類型は複数回答。自由記述本文は今回の集計に使用していません。