
「来年度のOJT担当者を決めたものの、事前研修で何を教えればよいか分からない」
新人を迎える人事・教育担当者にとって、指導する側の準備も大切な仕事です。担当者に業務経験があっても、仕事の手順を説明したり、新人の理解度を確かめたりする方法まで身についているとは限りません。
OJT担当者向けの研修では、育成計画を立てる・相手に合わせて教える・具体的にフィードバックするという三つの力を、演習を通じて練習しましょう。
この記事では、社内で実施できる3時間のカリキュラム案と、仕事に置き換えて使える演習例をご紹介します。
OJT担当者向けの研修の目標は「配属後に使える準備」を持ち帰ること
研修を「OJTの大切さを理解する」だけで終わらせず、担当者が職場で使えるものを持ち帰る構成にします。
たとえば、研修終了時の目標を次のように設定できます。
- 新人に任せたい仕事と、到達目標を書き出せる
- 一つの業務について、説明・実践・確認の流れを組み立てられる
- 新人の習熟度に応じて、教える・問いかける・任せる方法を選べる
- 観察した行動をもとに、良かった点と改善点を伝えられる
育成計画シートと、指導・フィードバックの練習記録を成果物にすると、研修後の行動につなげやすくなります。
【3時間版】OJT担当者向けの研修カリキュラム例
以下は、休憩10分を含めて180分の実施案です。演習に使う業務は、見積書作成、メール返信、受発注処理など、自社の新人が最初に取り組む仕事に置き換えてください。
| 経過時間 | テーマ | 内容・演習 |
|---|---|---|
| 0〜15分 | OJT担当者の役割 | 自分の経験を振り返り、指導上の不安を共有する |
| 15〜45分 | 育成計画の立て方 | 新人に任せる仕事を選び、到達目標と確認方法を書く |
| 45〜85分 | 教え方の使い分け | 説明する・問いかける・任せる場面を整理し、指導を練習する |
| 85〜95分 | 休憩 | |
| 95〜125分 | フィードバック | 観察した事実をもとに、良かった点と改善点を伝える |
| 125〜155分 | 困った場面への対応 | 同じミスが続く、質問が出ないなどのケースを検討する |
| 155〜170分 | 指導と業務の両立 | 確認時間、相談方法、上司への支援依頼を決める |
| 170〜180分 | 振り返り・行動計画 | 職場で実践することと、上司に確認することをまとめる |
これは社内実施用のモデル案です。参加人数や演習の発表時間に応じて調整してください。講義を増やす際も、指導を実際に試す時間は確保しましょう。
演習①:曖昧な育成目標を、確認できる目標に変える
「早く仕事を覚えてほしい」「一人で対応できるようになってほしい」では、どこまでできればよいかが伝わりません。
まず、自部署で新人に任せたい仕事を一つ選びます。そのうえで、次の四つを書き出します。
- いつまでにできるようになってほしいか
- どの仕事を、どこまで任せるか
- どの程度の支援があればよいか
- 何を見て、できたと判断するか
たとえば、見積書作成なら次のように具体化できます。
配属後1か月を目安に、標準商品の見積書案を、社内の確認表を参照して作成できる。顧客への送付前には、担当者の確認を受ける。
「一人でできる」と「確認を受けずに送ってよい」は別です。新人に任せる範囲と、担当者が確認する範囲も明確にしましょう。
演習後はペアで計画を読み合い、「この目標なら、本人も指導者も達成状況を判断できるか」を確かめます。
演習②:同じ仕事を、習熟度に合わせて教える
OJTでは、最初からすべてを任せても、毎回細かく説明し続けても、相手の成長に合わないことがあります。
見積書作成を題材に、次の三つの場面で関わり方を練習します。
| 新人の状態 | 担当者の関わり方 | 練習すること |
|---|---|---|
| 初めて取り組む | 手順と判断基準を示す | 実演しながら説明し、本人に試してもらう |
| 基本手順は分かっている | 考えを聞き、必要な支援をする | 「どこを確認すればよいと思う?」と問いかける |
| 安定して取り組める | 任せる範囲と確認時点を決める | 成果物、期限、相談が必要な条件を共有する |
指導者役、新人役、観察者役の3人で行う場合は、観察者が次の点を確認します。
- 仕事の目的と完成イメージを伝えたか
- 相手の理解を確かめたか
- 困ったときの相談方法を示したか
「分かりましたか?」だけで終わらせず、「最初に何を確認するか、説明してもらえますか」と、本人の言葉で理解を確かめる練習を取り入れましょう。
演習③:「ダメ出し」を具体的なフィードバックに変える
「もっと丁寧に」「ちゃんと確認して」と伝えても、新人は何を変えればよいか分からないことがあります。
練習では、場面・観察した行動・その影響・次に取る行動を順に整理します。
たとえば、次のような伝え方です。
今日の見積書では、商品の数量が依頼メールと異なっていました。そのまま送ると、金額の修正が必要になります。送付前に、商品名・数量・単価を依頼内容と照合しましょう。今回、どこで違いが生じたか一緒に確認できますか?
評価する対象を本人の性格に広げず、確認できる行動に絞ります。その後、本人の説明を聞き、改善方法を一緒に考えましょう。
良かった行動についても同じです。「よくできた」だけでなく、「判断に迷った段階で相談してくれたので、送付前に確認できた」と伝えると、続けてほしい行動が明確になります。
「同じミスが続く」「質問が出ない」をどう扱うか
ケース討議では、すぐに「本人の意欲が低い」と結論づけず、原因を確認する問いを考えてもらいます。
同じミスが続く場合は、手順を理解しているか、確認方法が決まっているか、作業量に無理がないかを確かめます。
質問が出ない場合は、どこが分からないか本人も整理できていない可能性があります。「困ったら聞いて」だけでなく、作業途中に確認する時間を設けたり、質問をメモして持ち寄ってもらったりする方法を検討しましょう。
担当者だけで判断が難しい問題は、上司や人事へ相談します。育成は担当者一人で抱える仕事ではありません。
研修後に、上司と共有する三つのこと
研修を実施した後は、作成した育成計画を上司と確認する機会を設けましょう。
共有したいのは、次の三つです。
- 新人に任せる仕事と、到達目標
- 指導・確認に使う時間と、担当者不在時の支援体制
- 進捗や困りごとを、いつ・誰と確認するか
担当者の通常業務を調整せず、指導だけを追加すると、計画どおりに進めることが難しくなります。担当者研修とあわせて、育成を支える職場の準備も進めてください。
OJT担当者研修の教材を準備したい方へ
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この記事の時間割は独自の実施案です。教材をご利用の際は、収録内容を確認し、休憩や演習の進め方に合わせて時間を組み直してください。
教材を一から作る時間が限られている方は、まず試し読みで、内容や講師ノートをご確認ください。
教える側の準備を、新人の配属前に
OJT担当者研修では、知識の説明に加えて、育成計画を作り、指導を試し、フィードバックを練習することが大切です。
研修の最後に「新人へ最初に任せる仕事」「最初の確認日」「上司へ相談したいこと」を決めておくと、職場での実践を始めやすくなります。新人を迎える準備として、教える側の研修も具体化していきましょう。